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C医師に対する意見

【No.4】

2004年7月19日

 平岩先生:上記の件に関して大変つたない意見ながらお送り申し上げます。

1. 日本の抗がん剤治療の将来方向に関して、真摯に傷つきやすい裸の魂をぶつけ合うような議論をされているところに、軽々しくいかなる意見も申し上げにくいですが、結論としてより現実に近いところに価値判断の基準を求めるか(C医師)、或いは遠い将来を見渡した上でベストと思うことを現在していこうとする将来思考の価値判断(平岩先生)との違いであるように承りました。

2. あえて崇高な理念をお持ちのお二人のお立場をもっと現実的に捉えるならば、平岩先生は今までの、或いは現状の日本の抗がん剤治療がそれを扱う人材の育成(臨床腫瘍医)、保険行政、病院経営も含めて欧米よりも遅れに遅れてしまっている制度・行政・インフラをこれ以上看過できない。たとえ一人であっても、限られた仲間内の能力しかなくとも、いかなる困難があろうとも 今すぐ行動を起こして毎日少しでも前進をせざるを得ない。要するに誰かを当てにしてこれ以上待つことを許されないで即行動のお気持ちでおられる。

 これに対してC先生は、平岩先生のお考えは良くわかるが一方で自分の目の前に常に湧き出てくる根治困難な多くの患者の主治医として全精力を挙げて取り組み、治療にあたりたい。
 しかし今までの渾身をこめた治療は必ずしも著効をあげておらず次第に打ちのめされた感じをお持ちである。
 したがって、ここで少しでも制度・行政・インフラといった未来志向の活動に勢力を割くことは結論として現場の治療から能力を割いていかざるを得ないのでそれだけの勇気を持つことができない。

3. 善意あふれるお二人の優秀な医療従事者にこのような苦しい選択を与えて放置している現状の医療行政責任者に怒りを覚えざるを得ない。
 しかしながらどちらか一方がいなくなっても即困ることになるので両者とも十分にサポートをえてそれぞれの目標を達成する必要がある。
 こうした現状を知りながら、第3者的な立場をとるならば上に述べた無責任な医療行政責任者となんら代わることがなくなってしまう。

 したがって我々としてはあくまでも平岩先生の理想に加わった以上、自分の問題として全精力を尽くさざるを得ない。

以上

 


このページは、週刊現代 読む抗ガン剤 第112回 『吐かない弱音、吐く弱音』の中に出てくる「C医師」に対する意見を掲載しております。(選考は平岩先生が担当しております。)


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