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補助抗癌剤治療の考え方

【 ID-1770 】

ID ID-1770 性別 女性 年齢 42歳
病 名 乳癌 進行度 ステージ2
手術歴 2001年05月 左乳房全部摘出
放射線
治療歴
- -
抗癌剤
治療歴
2001年05月〜2001年08月 タキソテール
  2002年11月〜2003年01月 AC
現在、最も辛い症状

肩甲骨から首への痛み(術後より続いている)

相談その1

2001年に乳癌摘出をしました。
大きさ・・・・・・・2.5CM、1,5CM
リンパ節転移・・・・4個
ホルモンレセプター・・・ER(−)PGR(+)
HR2レセプター・・・・(+)
  術後の補助療法として、2回(時を異にして)抗がん剤治療を行いました。2回目は、主治医に異例の対応と言われましたが、自分の強い希望でです。
  現在はホルモン療法として、ゾラデックス・タモキシヘンを行っています。
  CT/MRI/PET、腫瘍マーカには異常ありません。
  ただ、肩甲骨から背骨、首にかけて痛みが続きます。この痛みが何であるかは、議論してもしかたが無い状態だと思っています。

相談その2

 6月に承認された、経口抗がん剤ナベルビンに関しての質問です。
 一般論として過剰医療と評されるかもしれませんが、3回目の補助療法として、選択する価値はないでしょうか?
 副作用が少なく、生活への影響も少ないときいていますので、再発リスクは決して低くないと思える私としては、異常がない間に打てる手を出来るだけ打っておきたいと考えます。
 又、利用するとしたら、どの程度の期間どの位利用するのが妥当でしょうか?
 私の希を理解し、かつ助言を下されるのは、平岩先生しかいないと思います。
 お手数ですが、回答よろしくお願いいいたします。


平岩 正樹 先生の回答

 主治医からの説明もあったかと思いますが、リンパ節転移4個は重く受け止める必要があります。

 御心配には深く共感します。今、読売新聞で3週に一度、自らの乳癌の闘病記を書いている本田記者は私の患者です。リンパ節転移はありませんでしたが、いくつかの理由で、本人と議論を重ね、合意の下に、現在ナベルビンの補助抗癌剤治療を行っています。

 乳癌の補助抗癌剤治療を考える点で、重要な事実があります。それは乳癌が治癒したといえるのは他の固形癌と異なり、20年かかると言うことです。昨年秋、ニューイングランド医学誌に、世界で初めて、乳房温存療法の有効性がイタリアのグループから示されました。1970年代に始まった治療研究の結果です。1990年代から広く世界中で乳癌の早期癌に対して温存療法が行なわれて来ましたが、医学的には「見切り発車」ともいうべきものでした。もう少し厳密に言えば、イタリアの研究の中間報告で、「温存療法の成績は乳房切除術と変わらないだろう」という予想で、行なわれてきました。

 再発癌は乳癌に限らず、短期間で有効性を証明することは容易ですが、ある治療法が乳癌の「治癒(完治のこと)」に有効であるかどうかが学問的に確定するには、20年以上がかかるのです。

 しかしあなたに限らず、今の患者さんはどうすればよいのか、20年後を待っているわけにはいきません。温存療法が見切り発車であったように、補助抗癌剤治療もリスクを覚悟して、見切り発車(あるいは実験的治療)にならざるを得ません。

 重い抗癌剤治療で問題になるのは、副作用死と二次癌の問題です。二次癌とは抗癌剤による発癌の問題です。この損得を比較することは非常に難しいと思います。

 医者平岩としてではなく、私が患者なら、ということで、以下の文章は御理解ください。

 4個のリンパ節転移を重く考えて、私なら重い補助抗癌剤治療を希望すると思います。科学的根拠はまったくありません。

 「6月に承認された、経口抗がん剤」はナベルビンではなくカペシタビン(商品名ゼローダ)だと思います。乳癌で保険適応になっています。経口薬と言っても決して副作用死の可能性は低くはなく、一般的には1〜2%は覚悟する必要があります。私の抗癌剤治療は漸増投与であり、「補助抗癌剤治療は安全第一」が大原則です。なぜなら、癌はもうまったく残っていない可能性を忘れてはならないからです。

 ゼローダの利点は、内服薬で治療が簡便の一つにつきます。油断は決してできません。1錠/日からスタートして、週に1錠づつ漸増投与し、大きな副作用が出れば少し減らして、それを自分の適量とします。この考え方は、このサイト内の『読む抗癌剤 拡張版』の第56話が参考になるかもしれません。

 これを三つ目の補助抗癌剤治療として、たとえば1年間続けると思います。あるいは、半年として、残り半年はナベルビンを使うと思います。1年後にどうするかは、1年後にまた考えます。

 痛みについては、血液検査のICTP、尿検査のNTX、頸椎と胸椎のMRI、さらにPETの検査を受けられておられなければ、一度これらの検査を受けられることを強くお勧めします。

 

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